セン ヨシハル   SEN Yoshiharu
  銭 偉栄
   所属   松山大学  法学部 法学科
   職種   教授
発行・発表の年月 2013/02
形態種別 学術論文
標題 中国成年監護制度の現状とその未来像―日本法への示唆を兼ねて―
執筆形態 単著
掲載誌名 松山大学論集
掲載区分国内
出版社・発行元 松山大学
巻・号・頁 24(6),191-231頁
概要 中国の現行成年監護制度は、全体としては不備な点が多く、体系性に欠けている。また、ノーマライゼーションおよび本人の意思決定の尊重の基本理念に即していないところもあり、少子高齢化社会に十分に対応できるものではない。諸外国の先進的な例にならって、成年監護制度の再構築を目指すものとして、梁慧星主編『中国民法典草案建議稿』(法律出版社、2011年)がある。中国現行成年監護制度および上記梁慧星草案から得られた示唆を2点ばかり挙げておく。①中国現行成年監護制度に見られる公的監護(公的後見)の視点である。もっとも、公的監護または公的後見を導入する背景的事情は中国と日本とでは異なる。しかし、少子高齢化の進行につれ、親族後見の役割が後退し、将来的には、第三者後見がそれにとって代わるという事態が十分発生しうることは、日本も中国も同様である。したがって、専門職後見人および市民後見人だけでは成年後見制度の利用者の潜在的需要を満足させることができない事態に備えるため、公的後見制度の整備を検討すべきではなかろうか。②上記梁慧星草案のように成年後見人等の任期に関する規定を設けることである。同草案は、自然人が成年監護人であるときは、その任期を5年とし(同1844条1項)、成年監護人が同意すれば、延長もできる(同条2項)。延長した場合の任期は5年とする(同条3項) 。日本法にはこのような規定がなく、一旦成年後見人等に就任した場合は、正当な事由がなければ、その任務を辞することができないことになっている(日民844条、876条の2第2項および876条の7第2項による844条の準用)。成年後見人等の負担を軽減し、もって成年後見人等のなり手を確保するために必要である 。