ミョウショウ ヒロアキ   MYOSHO Hiroaki
  明照 博章
   所属   松山大学  法学部 法学科
   職種   教授
発行・発表の年月 2008/01
形態種別 学術論文
標題 正当防衛権の根拠と正当防衛の客観的要件の関係の再検討
執筆形態 単著
掲載誌名 刑法雑誌
掲載区分国内
出版社・発行元 日本刑法学会
巻・号・頁 47(2),190-205頁
概要 2007(平成19)年5月26日に開催された日本刑法学会第85回大会における個別研究報告に、若干の補足と最低限の注をおよび質疑応答の概要をくわえた。
正当防衛とは、「急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為」とされ、上記の要件を充たせば、「罰しない」と規定されている(刑法36条1項)。例えば、懐から取り出したナイフを用いて攻撃してきたAの急迫不正の侵害に対して、Bは、自己の生命または身体を防衛するため、手拳でAを殴り倒した場合、Aを殴り倒した行為が「やむを得ずにした行為」であれば、Bの行為は、刑法36条1項に該当し、正当防衛は成立するので、Bは、「罰」を受けることはなくなる。そして、刑法36条1項にいう「罰しない」とは、正当防衛行為の違法性が阻却されると解されているが、その根拠は、次のとおりである。すなわち、一般に、不正な侵害行為に対する反撃としての「正当防衛」は、「正は不正に屈するには及ばず」(Das Recht braucht dem Unrecht nicht zu weichen)という基本思想に基づく違法性阻却事由とされる。例えば、イェシェック/ヴァイゲントは、「正当防衛の基本思想は、たとえこの原則が社会的顧慮の思想から徐々に制限されてきているとしても、正は不正に屈するに及ばずという命題である」と指摘するのである(1)。
ここで、正当防衛の正当化根拠に関して、結論から述べると、「正当防衛権には、『自然権』としての側面と『緊急権』としての側面があり、その正当化もこれらの二つの面から考察しなければならない。そこで、自然権の側面においては、個人の自己保全の原理が正当化の働きをし、緊急権の側面においては、法の自己保全の原理が正当化の働きをすることになり、両者が同時に作用する」という見解を前提とするが、本稿では、「個人の自己保存」と「法の自己保存」(法の確証)との関係を明確にした上で、正当防衛権の根拠と正当防衛の客観的要件の関連性について―具体的には、「侵害の開始時期」および「対物防衛」であるが―考察した。