アキヤマ シンジ
AKIYAMA Shinji
秋山 伸二 所属 松山大学 薬学部 医療薬学科 職種 教授 |
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言語種別 | 日本語 |
発行・発表の年月 | 2011/03 |
形態種別 | 調査報告 |
査読 | 査読有り |
標題 | 忘れてはならない愛媛県の風土病-歴史に学ぶべきバンクロフト糸状虫症とウェステルマン肺吸虫症の浸淫 |
執筆形態 | 共著 |
掲載誌名 | 愛媛病薬会誌 |
掲載区分 | 国内 |
出版社・発行元 | 愛媛県病院薬剤師会 |
巻・号・頁 | 49(1),9-15頁 |
著者・共著者 | 牧 純、中西 雅之、関谷 洋志、西岡 麗奈、野元 裕、秋山 伸二、難波 弘行、玉井 栄治、白石 祥吾、荒木 潤 |
概要 | 熱帯・亜熱帯地域の諸外国のみならず、日本も亦慢性的な寄生虫感染に悩まされてきた歴史がある。愛媛県も決して例外ではなかった。就中ヒトフィラリアの重要な種であるバンクロフト糸状虫 (Wuchereria bancrofti) や昔肺ジストマと呼ばれたウェステルマン肺吸虫 (Paragonimus westermanii) の感染は同県の風土病としても大きな問題であった。現在では、感染ルートの「断ち切り」と「啓蒙活動」が奏功し、事実上問題がなくなった。しかし油断は大敵である。前者は媒介蚊の駆除と危険性認識の教育を徹底させることで、感染防御が達成されたが、後者は、感染源のモクズガニなどは商品価値があるので、媒介蚊とは事情が異なる。従って、近縁の感染源となるカニも含めてモクズガニそのものやそれらの老酒漬を生食することは慎み、今後とも完全な熱処理など調理法に配慮し続けなくてはならない。またバンクロフト糸状虫は海外流行地での滞在時には今日でも十分気をつける必要がある。肺吸虫 (肺ジストマ) に関していえば、国内でも地域によっては、ヒトへの感染の危険性がまだ残っていることも忘れてはならない。現代では優れた治療薬、プラジカンテルpraziquantel (ビルトリサイド) が開発され使われるが、合理的な心がけにより感染を防げば、投薬は当然不要である。これは「予防薬学」の重要な事例のひとつである。また再興感染症のひとつである老人性の肺結核が珍しくない現代は、肺疾患の患者に関して食生活の状況によってはウェステルマン肺吸虫症の可能性も排除しない薬剤師の見識が評価される時代でもあろう。1991年「薬剤師も医療の専門家のひとり」と規定されて以来、薬剤師もチーム医療の一員として疾病予防に積極的に参加する時代となりつつあるが、寄生虫病関係では残念ながらまだ不十分である。医学部教育においても寄生虫学がかなり軽視されていると叫ばれて久しいが、薬学教育でもこの点は十分に配慮する必要がある。この論文では、現代史も含めた歴史を教訓に、現代に活躍する薬剤師など医療関係者が取り組むべき上記2種寄生虫の第一次、第二次および第三次の予防について論議した。最も大切なことの指摘が最後となったが、寺田寅彦の名言「天災は忘れたる頃来る」およびマキシムの「賢者は歴史に学ぶ」は常に想起されて然るべきである。 |